八久和川を見に行く

2022年7月23日〜24日

L.鏡、後藤、西田、田中(邦)

コース・タイム

7/23

大井沢・天狗登山口出発 7.50

天狗小屋                            11:35

ウシ沢下降点                     12:30

出谷川本流                        14:50

泊地                                   15:10

7/24

泊地出発                            7:40

呂滝                                   9:10

湯ノ沢出合                        10:50

湯沢峰稜線                        13:23

天狗小屋                            14:50

登山口に下山                     18:25

報告

今年の年間計画で8月のお盆山行は朝日・八久和川となっていたのを見て、何十年振りかで自分も八久和の流れを見てみたくなった。還暦を迎えて日々体力の減退、それ以上に気力の減退を感じるようになり、もはや完全遡行など望むべくもないのだが、天狗からのタッチアンドゴーぐらいならと計画してみた。最初は夏道下降で本流に到達し、岩屋沢を登り返すつもりだったが、実際に参加者が集まってきて、ちょっとだけでも本流遡行し、呂滝ぐらいは見たいとウシ沢下降・湯ノ沢遡行の計画を立てた。ウシ沢は釣り師の登下降ルートになっているらしく、湯ノ沢は下降に使っている記録が一つあり特記事項なく問題なさそうだった。

登山口に着いた時には前日の雨も上がり、案外いい天気なのかと思いきや、歩き始めてすぐに雨が降り出す。他のメンバーは合羽なしで頑張っているが、自分はマメに合羽を来たものの暑さで汗だく、合羽の中はずぶ濡れで熱中症気味になる。ロボット雨量計まで来ると雨は小止みになり、濡れた服がひんやりする。粟畑でヒメサユリの花が迎えてくれた。一旦天狗小屋に入ってしばし休憩。管理人はまだ入っていないようだ。ここまでの雨で、小屋泊りか夏道を下って岩屋沢出合泊りに気分は8割方傾いていたのだが、ここで雨もちょうど止み、3人は行く気満々らしい。予定通りウシ沢に向かう。

角力取山を越えて少し降った鞍部からヤブに入る。ここで先頭の後藤君がヤブで目をつついたようだ。自分も以前眼科のお世話になって以来、保護メガネを手放せない。ヤブの中にかなりの密度で赤テープが打ってあり、釣り師路を確認させられる。トラロープで一段下りると水流に出た。ウシ沢の下りは下り易いとはいえ、朝日らしく岩盤の露出した沢で、雨も降り出しそれ程安直でもない。ロープの残置された懸垂が一箇所、巻きからヤブの懸垂が一箇所。意外に下りが長いと思う頃に本流に出合う。

ちょうどコマス滝のあるゴルジュ帯に出たが、本流は予想以上に増水し激流となっていて、とても沢身には降りられない。右岸のブッシュ帯を巻いていくと所々にテープがあり、上流側のゴルジュ出口の天場に導かれた。この辺り西田さんが覚えていて心強かった。増水で水も汲めないのではと思ったが、天場付近の水際は流れも濁りもさほどではなかった。タープを張り、焚き火と夕食の準備をしている間に水位は徐々に引いてきているようだった。小雨の中の幕場だが、寝場所が傾斜している以外は案外快適だった。

翌朝起きて見ると水位はほとんど平水ぐらいの感じに下がっている。下手するとウシ沢をただ戻ることを覚悟していたが、これなら行けそうだ。焚き火を始末して7時過ぎに出発する。

西田・田中は最初から竿を出しながら進む。最初は両岸が白い岩場の谷で、へつりと渡渉を繰り返しながらの遡行だが、ちょっと水位があると水勢が強く流されそうになる。この辺りに朝日の本流の沢の雰囲気を感じる。しかし程なく谷が開け広い河原になった。いわゆる広河原だ。ちょうど太陽も出てきて一気に明るい雰囲気になる。ここで後藤くんも竿を出し、のんびり釣行となる。広河原が尽きて谷が曲がるところに呂滝が現れる。地形図に記載された地点よりは幾分手前だった。呂滝自体は高さ数メートルの滝だが手前の釜というか淵というかが巨大なプールとなっている。「潜水艦」と言われる巨大魚が棲んでいるらしいが、西田さんが釣り上げたのはそこまで育つ前の奴だった。滝の手前で、ここまでの釣果を後藤くんが捌き、刺身となめろうにする。西田さんがおにぎりを出してきて握り寿司まで作ってくれて、岩魚尽くしをご馳走になった。

 ここでのんびりしている時に上流で鈍い音が聞こえた。滝の上流に雪渓が見えていたのだが、どうやらそれが崩壊したようだ。呂滝を右岸の岩場から高巻き上流に回り込んで行くと雪渓が姿を現す。まさかこの時期に残っているとは思わなかったが、それも見事なスノーブリッジ状になっている。さっきの音を聞いているので、下をくぐる選択肢はない。左岸側から雪渓の上を歩き、最後はヤブ壁を懸垂で沢身に降りる。

幸い雪渓はこれだけで(側壁のルンゼに雪崩れた雪がたまったものだろう)、程なく湯ノ沢が右岸からナメ滝で出合う。本流はその奥にまた滝となっている。弁天滝とか弁天岩という奴らしい。すさまじい水のほとばしりで、手前はまた大きな釜状になっている。西田さんがここで最後に糸をたらすと、この日最大、尺ものを上げる。これをリリースして、釣り師さんたちは竿をしまったようだ。

 湯ノ沢に入るとすぐに小滝が連続するが、ほとんど問題なく登ることが出来る。最初の二股は滝になっている左又へ。念のため後藤君にロープを出してもらう。右又の上部にでかい滝が見えて、こちらが正解と思う。湯沢峰の二つのピークの中間あたりを狙って行くが、分岐を水流の多い方、左、左と登って行くと北峰ピークに向かう方向に入りこんだ。やがて最後?の滝が出てくるが、登れなさそうなので右側のヤブに入る。面倒、とそのまま稜線までヤブこぎで上がる。それ程ひどいヤブではなかったがそれなりに時間がかかり登山道まで3、40分だった。

短い沢とはいえ、遡行の疲れが蓄積し、天狗への稜線歩きはペースが上がらない。水場のある天狗小屋にたどり着いて荷物を広げて大休止する。小屋の上で管理人の人が道刈りしていて、小屋は番犬?が留守番していた。小屋でもう一人休憩している人がいたのだが、携帯でしゃべっているのが聞こえてきて、どうやら疲れて下山遅れになるのを家族が心配し、防災ヘリを依頼したようだった。今日は小屋に泊まって明日ゆっくり下れば降りられるからと、あせってヘリを断っているようだった。

管理人の人と「どこ登って来たの?」とか一頻りお話しした後、重い腰を上げて下山にかかる。すでに3時を回り、登山口で携帯が通じないのも考えると最終連絡には遅れそう。天狗では電波が通じるので、とりあえず本部にはメールを入れておく。

ここからも下りとはいえ、細かいアップダウンもあって時間がかかった。登山口が6時半、湯ったり館についた時には7時近く、7時半には受付終了らしく結構ぎりぎりだった。高速に乗って途中で夕食をと思ったら、寒河江SA古関PAとも既に終了で、菅生PAでようやくメシにありつけるという落ちだった。

八久和川と行ってもほんの一部だけのダイジェスト遡行、キセル遡行という感じだったが、初日の増水の沢も含めて朝日の沢の雰囲気は十分に感じられたし、釣り師さんも満足の成果だったのではないか。ウシ沢、湯ノ沢も特別問題の箇所はなく、使える本流への道筋だった。それにしても、天狗登山道の長さにはますます体力的にきつくなるなあとも感じられのだった。

(記 鏡)