4/13 湯殿山スキー場発 9:20〜濁沢横断 11:50〜C1302 13:06〜田麦川左岸台地BC 14:15
4/14 BC出発 7:15〜尾根上1580m 8:48〜月山頂上 10:28~10:50〜笹川1500m 11:15〜雨告山南鞍部 12:08〜田麦川 12:40〜BC 13:10~14:25〜C1302 15:05〜湯殿山スキー場下山 16:2
年末に年間山行計画を決める際に、月山の雨告山の長大な尾根に行ってみたいと要望を出してみたら、4月の担当に指名された。2、3、4月と月山周辺に集中する計画だった。ところが蓋を開けてみると暖冬傾向の昨今でもちょっと類がないような雪不足の冬となった。2月、3月は当初計画から変更を余儀なくされ、4月も尾根末端からのルートは厳しそうに思われたため、あらためてルートを考え、湯殿山スキー場からのアプローチを思いついた。平野に面した庄内町放牧場側よりは、いくらか雪量的に有利との推定だった。それでもなお、雪の状態は不安だったので、2週間前にルート下部を日帰りで偵察に行った。ちょうどスキー場の最終営業日で、3月中にだいぶ降雪があり持ち直したこともあり、ゲレンデから十分な積雪だった。また懸念点の濁沢横断点も問題ないことを確認できた。こちら側からだいぶBCのスキーヤー・ボーダーが入って賑わっているのがやや意外であった。
会山行当日も偵察山行の時同様、好天に恵まれた。しかも二日間続けての晴天が約束されている予報。天気に泣かされることも多いこの時期、幸先の良いスタートとなった。今回のメンバーは一泊組が7名、それに塚本さんが日帰り参加で総勢8名と賑やかだ。湯殿山スキー場は既に営業終了だが、アスファルトの駐車場にはそれでも数台の車が停まっている。2週間で相当に雪は少なくなったが、それでも最初のゲレンデからスキー歩行開始。雪面に陽光が照りつけ、熱中症が心配になるほどだ。ゲレンデトップから樹林に入って行くと傾斜も緩み、幾分涼しくなる。偵察のおかげでルートに迷うこともなく、進む。濁沢の横断点は地図上夏道の横断点からやや上流側まで沢底を進み、右岸尾根の張り出しを回り込んだ辺りから尾根に上がる。急登から尾根上に出ると一気に展望が開けてくる。日頃見慣れた志津周辺の穏やかな山容とは対照的な深い谷と細い尾根、月山西面の景色だ。月山本峰はまだ姿を現さないが、高度を上げていくと徐々に品倉尾根の向こう側に姥ヶ岳や湯殿山の頭が顔を覗かせてきた。
展望を楽しみながらC1302まで登ってきたところで、その先のC1479の三角斜面に人影というか大勢の人の姿が現れた。既に志津側の月山スキー場もオープンしており、そちらから滑り下りてくるスキーヤー達だった。それも3、4パーティ総勢20人近いところから見てガイドツアーのパーティと思われた。ここまで静かな山を独占していたので呆気にとられる。彼らはC1302のコルから濁沢に向かって滑り降りて行った。
さて日帰りの塚本さんもこの辺りから引き返すとのこと。北海道への引っ越しが決まっていて、会山行の参加も今回が最後。文字通りのお別れである。記念撮影をして別れるが、C1479の斜面を滑って戻るとのことで、泊りメンバーも一緒に登って行った。自分と西田さんは偵察時に三角斜面は滑っているので、登らずにトラバースで天場を目指す。
地図上の点線が切れた辺りから尾根を回り込み、急斜面を東側に下りて天場予定地の雪の平に出た。背後に雪庇の出た尾根に囲まれ、前面は田麦川の渓谷に突き出したテラス状の場所である。尾根に近い方は雪庇のブロックが落ち来そうなので、なるべく離れたところに泊地を定める。上方には月山の本峰西面が雪壁となって聳え、下方には庄内平野から日本海を見下ろす絶景の地だ。西田さんと二人でまずは雪のテーブルを作って、滑ってくるメンバーを待つ。やがて全員が集合し、テント設営も後に回してまずは乾杯となる。ピーカンの天気、風もほとんどないから出来ることだが、そのままなし崩しに宴会に突入してしまった。
一段落したところで明日のルートの偵察に出る。平坦地の東側に小さな沢があり田麦川に下りられる。雪で埋まった沢底を横断して対岸を一段登ってみると周辺の展望が開ける。そのまま雪の斜面を尾根に上がれそうなのを確認して偵察終了。後ろから荻野君と田辺君が登ってきて、一滑りしようとさらに上の斜面に登って行った。天場に戻ると西田さんがスキーを背負って後背地のルンゼ状斜面を登り始めた。飲み直しながら眺めていたが、かなり標高差のある斜面を時間をかけて登って行き、荻野君達がC1479から滑って戻ってきてもまだ登っていた。結局急斜面の終りまで登り切って滑り下りてきた。日本海の夕日を眺めながら各自用意の夕食を済ませてテントに入ったが、元気な人はまだしばらく飲んでいたようだった。
予定の時間通りに起床、朝食を済ませ、BCにテントを残して出発。今日も引き続き快晴である。前日の偵察通り、田麦川を横断してC1479の尾根を登って行く。ザラメ雪は凍ることもなく、快適にスキー登高可能。一旦傾斜が緩むあたり、月山本峰の西面が雪の壁となって迫ってきて、滑降予定の笹川源頭斜面も観察できる。1600m付近から斜面が急になり、左側から巻き気味に登って行くが、側面は笹川に向かってかなり急な雪面になっており、雪が固い場合にはアイゼンを使用した方が良さそうだ。この尾根の登りの途中で荻野君がスキーアイゼンを谷に落としてしまった。谷底まで落ちて行ったので、帰りに拾えることを期待。
尾根を登りつめると姥ヶ岳から続く稜線とジャンクションで合流する。ここまで他パーティのまったくいない領域を歩いてきたが、一転してスキー場方面から人の列が続いているのが眺められる。先頭を行く西田さんは最後まで一般登山道に合流しないで忠実に尾根を辿って頂上台地に到達した。
まだ雪に埋もれた山頂神社の屋根の脇で全員の記念撮影をした後、少し戻った地点から笹川に向かって滑降開始。幸い雪はまだしっかり繋がっていて滑り込めた。入口は急傾斜だが横幅の広い大斜面が続いている。雪質も所々白い雪がまだらになっているがストップ雪という程ではなく滑りやすい。各人思い思いのラインで滑り下りるが、今回のパーティは新人の田辺君含めて足並みが揃い、楽しく滑降できた。途中荻野君は側斜面に引っかかっていたスキーアイゼンを無事回収。標高差500メートル下り、傾斜が徐々に緩くなってきたところで一旦停止。ところがここで西田さんの携帯がないという。どうやら斜面の初めの方で転倒した時にポケットから落ちたらしいが、大体の心当たりがあるらしく、西田さんは独り登り返して行った。
笹川の谷をさらに滑り降りる。BCに戻るには標高1280メートル付近から一旦雨告山南側の鞍部に登り返すが意外に急斜面で苦労した。時間があれば雨告山往復と言っていた荻野君は、稜線にいやらしく引っかかっている雪庇を見て断念。鞍部でシールを剥がしてもう一滑り、田麦川に向かって滑り降りた。田麦川の出合地点は一部沢が口を開けていたが、慎重に迂回しシールを付け直す。田麦川の沢底を、台地への登路の細い沢まで登り返し、BCに帰着した。
天場でお茶を飲んだり行動食を食べたりしてからゆっくりテントを撤収する。西田さん待ちなのでのんびりできて却ってありがたかった。やがてトランシーバーが入り、無事携帯を回収とのこと。天場から眺めていると、登りの尾根に途中からトラバースし、尾根沿いに滑ってくる西田さんの姿がよく見えた。
西田さんも戻って、重くなった荷物を背負い天場を後にする。登り返しと水平トラバースのC1302までは足取りも重くなる。他の人より余計に登っている西田さんもさすがに疲れたようだ。ここから最後の滑降は雪も緩んで重くなり、林間緩斜面は滑りが悪くなる。ゲレンデの雪もガタガタの所が多いが、最後のバーンは比較的気持ち良く滑って、全員無事下山完了した。天気は最後まで上々であった。
雪不足の冬が続き不完全燃焼の山スキーシーズンだったが、3月に降った雪のおかげもあって、シーズン末期ながら無事月山の西面を滑ることができた。絶景を望む田麦川テラスのキャンプは忘れ難い思い出となった。
(余談)天場に向かうトラバースルートは丁度夏道に点線道が描いてあるところだ。歩きながら、この途中で終わっている点線道が何のための道なのか不思議だったのだが、後日ネットを見ていたら、これはどうも西補陀落に至る道が途中まで記入されているものらしかった。ネットでは実際にこの道をさらに先まで辿り、西補陀落の霊場まで歩いている最近の記録も見られた。となれば、かつて今出さんが山伏修行に入ったり、深野さんが真の西補陀落霊場を探しに行っていたのもこの道であろう。山行中にはまったく思いが至らなかった、不肖の後輩である。
(記 鏡)