南面白山ー山寺下り(2021年2月1日)

前年の秋に甲沢から小東岳に登った際に、南面白山との間の谷をスキーで下れるのではないかと思いついた。谷筋は下部が狭いもののずっと林道が走っているため、スキーで降るのに支障はなさそうだ。さらに冬前に林道を終点まで歩いて、十分に下降ルートとして使えそうなことも確認した。小東岳の肩から下りるルンゼ状の谷も良さそうだったが、コースを考えると面白山の駅から南面白山に登り、南のコルから谷に下りて山寺駅に下るのが順当と思われた。行き帰りとも電車で行ける山越えのツアーコースというのも面白そうだ。

日曜日の計画を出したところ、7人が集まり大勢でのチャレンジとなりそうだったのだが、当日は強風が吹き荒れる天気で電車も乱れそうということで断念、船形山への転身となってしまった。翌日月曜日は好天ということで、仕方ない廃スキー場に下見にでも行くかと思ったところ、卒業前の自由の身である荻野君から同行の申し出があった。渡に船と山越え山寺下りの再チャレンジ決行となった。

当日の天気は快晴、電車は定刻に面白山高原駅に到着。駅の待合室で準備をして歩き出す。スキー場の斜面は前日の荒天でわずかなシュプール(おそらく西田さん達のものだろう。。)がうっすらと見えている。ラッセルはくるぶしの下程度で順調に高度を稼ぐ。

スキー場トップから南面白山への尾根に入る。ルートにピンクのテープが付けてあり迷わずにすむ。急斜面にかかるところで、ルートは右手の谷へのトラバースとなる。吹き上げの風に叩かれて雪面は硬くクラストしているので、無理せず板を背負ってツボ足で行く。幸いアイゼンが必要なほどではなかったが、ちょっといやらしいトラバースだった。谷筋から急な斜面をしばらく直登する。この辺りから荻野君が先頭でステップを切ってくれる。徐々に傾斜が緩くなり、スキー登高に切り替える。一帯のブナ林の梢に霧氷が輝いている。頂上まで結構な登りだが荻野君が若さで引っ張ってくれた。

登り着いた山頂は大展望が広がっていた。月山・葉山が間近に迫り、鳥海山も意外に近く望まれる。船形・蔵王はもちろん東北南部の主な山々が全て一望という感じだ。すぐそばには大東岳のブナ林ん北面も間近に見えている。

準備をして滑降態勢に入る。まず南側のコルに続く稜線は衛星写真でも立木がないことを確認している。ただ尾根筋には小さな雪庇が出ているのでこれを避けて東側の広い斜面にラインを取る。オープンバーンとなっていて快適な滑降を楽しむことが出来た。鞍部の尾根にも雪庇が出ているので、慎重に横滑りを混じえて進む。コルから西側の谷に向かって降りて行く。ここが傾斜も急で核心となるところと見ていたのだが、入り口こそヤブがうるさいものの、少し下がると適度に間隔の空いた樹林となり、十分に滑降を楽しむことが出来る。雪質はややパック気味の新雪、縦に風の筋が入っているので、時々止まって左右にラインを選びながら谷底に降りて行く。時折ガリっとソールに当たるのは小さなデブリが固まったものだろうか。標高差300メートル、想像よりも長く感じる斜面だった。

谷底の傾斜が緩くなると杉の植林帯となり林道が近いことを知らせる。小さな沢に水が出てくるので、慎重にルートを選びながら進むと標高740メートルのところで林道に出た。ここで小休止、登りのアルバイトと結構タフな滑降で太腿の筋肉がつりそうになっているのに気づいた。ともかく林道に出てしまえば後は安全地帯のようなものだ。

と思っていたのだがまだアルバイトが待っていた。林道の雪も最初はよく滑り順調だったのだが、日当たりの良いところでは雪が一気に腐り始めてスキーのソールにボッコになって来た。シールにボッコになるのは良く経験するが、シールを外したソールにこれほどボッコが付くのはあまり経験にない。また雪で折れた倒木やツルのからんだ枝が垂れ下がってルートを塞いでいる箇所がずいぶん出てきた。このあたりも荻野君が先頭に立って下りラッセルをこなしてくれた。途中標高460メートル地点では道路の上を沢水が流れているが、幸い水深は浅くブーツのまま歩いて渡渉。

萱小屋沢林道から紅葉川林道に合流すると一旦ゆるやかな登りになる。水道の浄水場までくると道路は除雪された跡がある。通常ならスキーで下れるのはここまでになりそうだ。道路上にうっすら雪が積もっているのをいいことにそのままスキーで進む。車の轍が凍っていて林道よりもよく滑る。所部の集落で民家が出てきたら路上滑走はいかがなものかとも思ったが、雪が残っているのでそのまま分岐のある橋のところまで滑り降りることが出来た。冬期休業中のジェラート屋の前でスキーをザックにくくって駅までの最後の道をのんびり歩き出す。コロナの上に平日とあって観光客の姿も見えない。山寺の登山口の前を通って山寺駅に着くと、ちょうど1時台の仙台行きが出たところだった。

ストーブのある山寺駅の暖かい待合室でのんびり荷物をまとめて行動食を食べ次の電車を待つ。山寺は快速停車駅なので次の2時台の快速に乗ることが出来た。これでも予定の3時より1本早い、順調な山行だった。ルートの大半を先頭で引っ張ってくれた荻野君に感謝。

降雪直後でなければ林道はもっと雪が締まってジェットコースターになると思うが、上部の滑降はつまらなくなるかもしれない。電車の時間内で十分楽しめる山越えツアーコースななると思うのだが、やはり物好き限定コースだろうか。(鏡)

2021年2月1日

L.鏡、荻野

面白山高原駅着(8:06) 駅出発(8:16) ゲレンデ上部(9:30) 南面白山頂上(10:55〜11:20) 萱小屋沢林道(11:46) 紅葉川林道分岐(12:35) 山寺駅(13:20)